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献茶婦とは葬儀・法事等を手伝う専門職です
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この仕事を始めてから 電車利用が増えた。


ある日、 特急に間に合わず
人の減ったホームで次の電車を待っていた。

そこに同年代のBRIO風の男性が
大股でゆっくり私の前を横切った。

BRIOってのは 男性誌。
3-40代エグゼクティブ狙い。
MEN's EX よりは硬派で
LEON よりはジェントルマンってとこかな。
・・・と一応 注釈をば

背もそこそこあり、 なかなかいけてる風のこの男性、
しばらくすると 戻ってきた。
やはり大股でゆっくり。

少し観察してみると
一定の場所をいったりきたりしてたのだ。
大股で歩いているのは 黄色い点字ブロックの上。
そして・・・目がどこも見ていなかった。

その目が怖かった。
おそらく 彼の世界のものしか見えていない。


程なく 次の電車が近付いてくるとのアナウンス。
その男性は 電車が入ってくる方向のホームの端、
「乗り場」 ではない場所で立ち止まった。

私は最後尾の車両を待つ場所にいた。
電車が入ってくる時、
私は彼の方向を見ることが出来なかった。


電車はホームに入り、 私を含む多くの人間が乗降した。
ドアが閉まる間際、 彼が立っていた方向を見やると
彼は 頭を抱えてうずくまる姿が見えた。



仕事に行くと 最低1人は死んだ状態なワケで。
そこでの 「死」 は とても静かで穏やかだ。
「お別れ」 は 今だっていつだって誰の式でも哀しいけれど。
でもね、 突然来るかも知れない死の瞬間は やはり恐ろしい。

先述の男性が うずくまっていた姿を見て
言いようのない安堵感があった。
彼が生き延びてよかった、 と思ったのではない。
多分・・・いや きっと
目の前で 無残に人が死ぬ瞬間を見たくなかったのだろう。



電車を利用することが増えた。
この日以来 ホームでは
列の先頭に立つことはない。
不審な人物に 背中を見せるのを恐ろしいと思う。
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プロフィール
HN:
にわ晃子(acco)
性別:
非公開
職業:
献茶婦
自己紹介:
阪神間で動き回っています。
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